咳は様々な原因で起こりますが、鼻水や鼻の炎症によって咳が長引くことがあります。鼻水・鼻詰まり・鼻水の後ろに垂れ込む感じなどが、咳とともにある方が当てはまります。ここでは鼻によって引き起こされる咳について説明いたします。
以下のような症状がある方は参考にしてください。
- 咳と共に鼻水がよく出る
- 鼻水がのどの奥に垂れ込んでいく感じがある
- 朝起きた後に多い咳、咳払い
- 黄色い汚い鼻水が出る
上気道咳嗽(がいそう)症候群
鼻が原因の咳は、主に鼻水が気管の方に流れることが刺激になって起こります。「後鼻漏」や「副鼻腔気管支症候群」と言われる病気がこれにあたります。咳の多くは繰り返される咳払いで、「鼻の奥に何か流れる感じ」として自覚されることもあります。咳払いとは、のどや気道にたまった分泌物をわざと咳をすることで吐き出す行為のことです。また咳は起床後に多く、寝ている間にはほとんど咳が出ません。咳の原因の17-34%程度が後鼻漏によるものと言われています。
鼻水が出る原因が重要で、以下のものが多く見られます。
- 副鼻腔炎
- アレルギー性鼻炎
- 血管運動性鼻炎
副鼻腔炎
蓄膿と好酸球性副鼻腔炎の違い
蓄膿 | 好酸球性副鼻腔炎 | |
---|---|---|
症状 | 鼻詰まり、頭痛、ほほの痛み | 嗅覚が落ちる |
鼻水の性状 | 黄色く汚い、粘稠 | にかわ状、粘稠 |
鼻ポリープ | ない場合がある | ある |
後発部位 | 上顎洞 | 篩骨洞 |
特徴 | 気管支拡張症 を合併することがある |
喘息やアスピリン不耐症 を合併することがある |
治療 | 抗菌薬 | ステロイド 抗ヒスタミン薬 生物学的製剤(デュピクセント) |
副鼻腔とは鼻腔の周囲にある空間で、ここで細菌感染やアレルギーによって炎症が起こることで鼻水が増えます(副鼻腔炎)。細菌感染によって起こる場合は蓄膿(従来型の副鼻腔炎)と呼ばれ、アレルギーによるものを好酸球性副鼻腔炎と呼びます。
蓄膿には急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎がありますが、いずれも黄色い鼻水や痰を伴います。急性の場合は、頭痛やほほや額の痛みを伴います。急性副鼻腔炎では、主にペニシリン系もしくはニューキノロン系の抗生物質で治療を行います。副鼻腔炎は繰り返す場合も多く、細菌に抗生物質耐性ができてしまって効きにくくことがあります。そのような場合は、別の抗生物質や抗菌薬の投与量を増やして対応します。慢性副鼻腔炎ではマクロライド系の抗生物質を使用します。主に細菌を殺す目的ではなく、炎症抑えるために使用します。
好酸球性副鼻腔炎は、副鼻腔においてアレルギーによる炎症が起こっており、その多くが喘息や好酸球性中耳炎などの他のアレルギー疾患を合併します。これらの合併症は「One airway One disease」と呼ばれ、鼻と気管支は繋がっており気道という一続きの管で起こるアレルギー疾患と考えられています。治療は、ステロイド点鼻薬やロイコトリエン拮抗薬などを使用します。重症例には、デュピクセントという生物学的製剤の注射を行います。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、花粉やダニなどのアレルゲンを体内から異物を排除しようとくしゃみ、鼻汁、鼻閉の3つの症状が生じてしまう病気です。アレルギー性鼻炎によって生じた鼻水が、のどの方へ垂れ込むことで咳が生じます。鼻水は副鼻腔炎とは異なり、主にさらさらとした水様性で、抗ヒスタミン薬やステロイドの点鼻薬が効果あります。またアレルギー性鼻炎とともに、喉頭アレルギーを合併してのどのムズムズ感や咳が出ることがあります。
血管運動性鼻炎
血管運動性鼻炎の特徴(アレルギー性鼻炎と比較)
アレルギー性鼻炎 | 血管運動性鼻炎 | |
---|---|---|
症状 | 鼻水、くしゃみ、鼻詰まり | |
原因 | アレルギー反応 | 自律神経の異常 |
アレルギー検査 | 異常値が出る | 正常 |
症状の特徴 | 季節の変わり目で症状が悪化 ダニなどのアレルゲンが原因となる |
寒暖差で誘発される |
治療 | 抗ヒスタミン薬 ステロイド点鼻薬など |
寒暖差を避ける 抗ヒスタミン薬、ステロイド点鼻薬など |
血管運動性鼻炎は,鼻の粘膜の血管の腫れによって症状が現れる慢性の鼻炎です。 原因はアレルギー反応ではありませんが、アレルギー性鼻炎と同様にくしゃみ・鼻みず・鼻づまりといった症状が現れます。寒暖差によって症状が誘発されることが多く、例えば朝暖かい布団から抜け出た直後からくしゃみ・鼻水などの症状が出る、夏に屋外から冷房の効いた室内に入ると鼻がズルズルと不調になる、などと訴えることがあります。
検査を受けてもアレルギーの原因は特定できません。主に自律神経の異常が原因と言われていますが、はっきりとした原因はわかっていません。血管運動性鼻炎を改善するためには、温度差を小さくすることや規則正しい生活を送り自律神経を整えることが重要です。
院長からのメッセージ
鼻が原因の咳は、上気道咳嗽症候群と呼ばれ、診断には問診が重要です。鼻水が後ろに垂れ込む感じ、朝多い咳、繰り返される咳払いが疑うきっかけになります。場合によっては、副鼻腔のレントゲンやCT検査を行い診断します。治療は、抗アレルギー薬や点鼻薬・抗生物質などの投与を行います。時に外科的な治療が必要にあることがありますので、その場合は耳鼻科専門医へ紹介させていただきます。